【賃貸】原状回復とは?入居者の負担範囲やガイドライン、費用相場を解説

更新日:2024.11.29

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賃貸物件の退去時には「原状回復」が必要です。

しかし、入居者とオーナーの間で原状回復の負担範囲について認識の違いが生じ、トラブルになるケースがあります

独立行政法人国民生活センターに寄せられる賃貸物件に関する相談のうち、原状回復に関するものが約4割を占めています。

原状回復についての知識や、入居者が負担すべき範囲を理解することで、余計な出費やトラブルを防ぐことが可能です。

この記事では、原状回復における入居者の負担範囲や費用の相場について解説します。

原状回復の費用負担を抑える方法も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

※参照:独立行政法人国民生活センター|住み始める時から、「いつか出ていく時」に備えておこう!-賃貸住宅の「原状回復」トラブルにご注意-

原状回復とは?

原状回復とは、賃貸物件を退去する際に入居時の状態に戻すことを指します。

民法第621条では、入居者の原状回復義務を以下のように定めています。

(賃借人の原状回復義務)

第六百二十一条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

引用元:e-GOC法令検索|民法第六百二十一条

条文には、入居者が負う原状回復義務は、通常の使用や経年変化などを除くと記載されており、この部分に関してはオーナーが負担するものとしています。

「現状回復」「原状復帰」「現状復帰」の違い

原状と現状、回復と復帰の違いは以下のとおりです。

用語

意味

原状

初めにあった状態。もとのままの形態。

現状

現在の状態、ありさま。

※引用元:goo辞書|原状goo辞書|現状

用語

意味

回復

悪い状態になったものがもとの状態に戻る(戻す)こと。

復帰

もとの位置・状態などに戻ること。

※引用元:goo辞書|回復goo辞書|復帰

原状はもとの状態を意味し、現状は現在の状態を指す点で異なります。

なお、回復と復帰はどちらも「もとの状態に戻る」という意味になります。

つまり、「原状回復」・「原状復帰」は最初の状態に戻すことです。

「現状回復」・「現状復帰」は現在の状態に戻すことを意味しますが、日本語の意味としては誤りです。

原状回復はどこまで負担すべき?ガイドラインを基に解説

原状回復は、すべて入居者が負担するのではなく、オーナーが負担する部分もあります。

ここでは、原状回復の負担範囲について以下の順に解説します。

  • 入居者の故意・過失による汚れやキズは入居者負担
  • 経年劣化や通常損耗はオーナー負担

入居者の故意・過失による汚れやキズは入居者負担

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復を以下のように定義しています。

原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということを明確にし、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」と定義して、その考え方に沿って基準を策定した。

※引用元:国土交通省|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン

つまり、入居者が原状回復で負担する範囲は、「入居者の故意・過失などによる汚れやキズの修繕」となります。

入居者の故意・過失などによる汚れやキズとは、具体的に以下のようなものが該当します。

  • タバコのヤニ汚れ
  • ペットがつけたキズや臭い
  • 不適切な使用による設備の損傷
  • 手入れ不足による汚れやカビ

これらは通常の使用を超えた損傷とみなされ、入居者が原状回復費用を負担する必要があります。

ただし、入居年数や使用状況によって、負担割合が調整される場合もあります。

経年劣化や通常損耗はオーナー負担

前述の国土交通省のガイドラインにおいて、経年劣化や通常の使用でついたキズは、入居者負担ではなくオーナー負担と定義されています。

経年劣化や通常の使用でついたキズとは、具体的に以下のようなものが該当します。

  • 日焼けによる壁紙や畳の変色
  • 入居者退去後のハウスクリーニング
  • フローリングのワックスがけ
  • 経年劣化による設備の故障
  • エアコンの内部洗浄

なお、東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」では、入居者とオーナーの原状回復における負担区分の基本的な考え方が、以下のように図示されています。

※出典:東京都|賃貸住宅トラブル防止ガイドライン

このガイドラインに法的な強制力はありませんが、原状回復における一般的な負担区分として押さえておきましょう。

ただし、ガイドラインにオーナー負担と記載されているものでも、賃貸借契約書に入居者が負担すると記載されている場合は、原則として入居者が負担する必要があります

たとえば、「ハウスクリーニングや鍵の交換代は入居者が負担する」と賃貸借契約書に記載があれば、入居者負担になります。

入居者の原状回復にかかる費用

入居者の原状回復にかかる費用は、部屋の面積や間取り、キズの程度によって変動します。

入居者が負担する原状回復費用の目安を間取り別にまとめると、以下のようになります。

間取り

原状回復費用(目安)

1R(ワンルーム)・1K

1.5〜4万円

1DK・1LDK

2〜5万円

2DK・2LDK

3〜8万円

3DK・3LDK

5〜10万円

4DK・4LDK

9万円〜

入居時に敷金を払っていれば、そこから原状回復費用が差し引かれますが、敷金なしの賃貸物件では退去時に支払う必要があります。

汚れや部位別にかかる原状回復費用の目安は以下のとおりです。

汚れや部位

原状回復費用(目安)

キッチンの汚れ

1.5〜2.5万円

床材のクリーニング

1.5〜2.5万円

壁紙の張り替え

3〜4万円

水あかやカビ

0.5〜2万円

原状回復費用は、汚れの程度や見積もりを作成する業者によっても異なります。

原状回復の費用負担を抑える方法

原状回復の費用負担を抑えるには、以下の方法を押さえておきましょう。

  • 賃貸借契約書と原状回復費用の内訳を確認する
  • 退去前に掃除しておく
  • 入居時に部屋の写真を撮っておく

それぞれ詳しく解説します。

賃貸借契約書と原状回復費用の内訳を確認する

原状回復費用を安く抑えるには、入居時には賃貸借契約書を、退去時には原状回復費用の内訳を確認しましょう

ハウスクリーニング費用や鍵交換代など、ガイドラインではオーナー負担の内容であっても、賃貸借契約書で入居者が負担するという特約があれば、入居者の負担になります。

原状回復費用の内訳で、ガイドラインではオーナー負担となっている費用まで請求されている場合は、管理会社やオーナーに確認すると良いでしょう。

退去前に掃除しておく

退去の立ち会い前に、自分で可能な限り掃除をしておくと良いでしょう。

部屋が汚れている状態で原状回復費用の見積もりを作成されると、費用が高額になる可能性が高くなります。

特に、水回り設備や床、壁の軽度な汚れは、あらかじめ取り除いておきましょう。

入居時に部屋の写真を撮っておく

中古で築年数が経過している賃貸物件の場合は、入居の時点ですでにキズや汚れがついている場合が多いです。

元々あったキズや汚れの原状回復費用まで請求されないように、入居時に部屋の写真を撮っておくのがおすすめです。

独立行政法人国民生活センターによると、原状回復に関する相談件数は、毎年1万3,000〜4,000件程度となっており、具体的な相談事例としては以下のようなものがあります。

<事例>

1. 敷金礼金不要のアパートを退去したら、契約書の記載と異なるエアコン清掃代や入居前からあったフローリングのキズの修繕費用まで請求された。

2. 20年以上住んだマンションを退去した際、入居時から付いていたキズについて「最近付いたものだ」として修繕費用を請求された。

3. 敷金礼金不要のアパートを退去した際にシャワーヘッドの交換費用を請求され、入居時から不具合があったと伝えたが証拠がないと言われた。

※参照元:独立行政法人国民生活センター|住み始める時から、「いつか出ていく時」に備えておこう!-賃貸住宅の「原状回復」トラブルにご注意-

入居時に撮影日付がわかるように、キズや汚れの写真を撮っておけば証拠になります。

余計な費用を負担せずに済むように、対策を講じておきましょう。

まとめ

原状回復とは、賃貸物件を退去する際に入居時の状態に戻すことを指します。

原状回復の負担範囲は、基本的に以下のようになります。

  • 入居者の故意・過失による汚れやキズは入居者負担
  • 経年劣化や通常損耗はオーナー負担

原状回復にかかる費用は、1R(ワンルーム)・1Kで1.5〜4万円、2DK・2LDKでは3〜8万円が目安です。

原状回復の費用負担を抑えるには、入居時の写真撮影や退去前の清掃など、事前の対策をしっかりと講じておくことがポイントです。

賃貸借契約時には原状回復の負担区分を確認し、不明な点はその場で解消するようにしましょう。

原状回復の負担区分について理解しておき、余計な費用まで請求されないように注意しましょう。

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iimon 編集部

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