賃貸物件を借りる契約のひとつに「定期借家(ていきしゃっか)契約」があります。
定期借家契約とは、契約期間が満了しても更新できず、入居者は原則退去しなければならない契約のことです。
定期借家契約で賃貸物件を借りる際は、普通借家契約との違いやメリットを理解しておくことが重要です。
この記事では、定期借家契約について詳しく解説します。
目次
定期借家契約とは?
定期借家(ていきしゃっか)契約とは、契約期間が満了しても更新できない契約のことで、借地借家法の一部改正により、平成12年3月から施行された制度です。
契約期間に制約はないため、オーナーは短期から長期まで柔軟に設定できます。
もし、入居者が契約期間が満了した後も住みたい場合は、オーナーが承諾すれば、再契約を結ぶことで住み続けられます。
国土交通省の「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」によると、定期借家契約の認知度は以下のような結果でした。
定期借家契約の認知度 | 割合 |
知っている | 12.3% |
名前だけ知っている | 25.5% |
知らない | 61.3% |
定期借家契約の存在は、約4割の人が知っているという結果でした。
また、実際に定期借家契約で賃貸物件を借りた人はわずか2.1%で、普通借家契約が94.8%という結果でした。
つまり、賃貸物件を借りる契約のほとんどが普通借家契約であることがわかります。
定期借家契約と普通借家契約との違い
普通借家契約とは、契約期間が満了しても更新できる契約のことです。
前述の調査からもわかるように、賃貸物件を借りる契約は、普通借家契約が一般的です。
定期借家契約は、以下の点で普通借家契約とは異なります。
- 契約を更新できない
- 書面で締結する必要がある
- 途中解約は原則できない
それぞれ詳しく解説します。
契約を更新できない
定期借家契約は、契約期間が満了すると自動的に契約が終了するため更新できません。
契約期間が過ぎても住み続けたい場合は、オーナーに承諾をもらい、新たに契約を結ばなければなりません。
なお、普通借家契約の場合は、オーナー・入居者双方が解約の手続きをしない限り、自動的に契約が更新されます。
そのため、定期借家契約は長く住みたい人や、退去日が決まっていない人には不向きであるといえます。
書面で締結する必要がある
定期借家契約の締結は、公正証書などの書面で行う必要があります。
公正証書とは、公証人が公証役場で作成する契約書・合意書などのことです。
公正証書で定期借家契約を締結することで、オーナーは入居者が家賃を滞納したり、契約期間後も住み続けたりした際の強制執行がしやすくなります。
なお、公正証書ではなく一般的な契約書でも問題ありません。
普通借家契約の場合は、定期借家契約とは異なり、口頭でも契約は有効です。
しかし、トラブルを防ぐために、普通借家契約においても契約書を作成するケースが大半です。
途中解約は原則できない
普通借家契約は、途中解約する場合の取り決めを行うのが一般的ですが、定期借家契約では契約期間中の途中解約は原則できません。
ただし、契約で途中解約の特約があれば、内容に従うことで解約できます。
なお、途中解約の特約がなくても、入居者が以下の要件を満たしていると例外的に途中解約できるケースがあります。
- 床面積が200㎡未満の居住用の賃貸物件である
- やむを得ない事情により入居者が住むことが困難になる
やむを得ない事情とは、転勤・入院・親族の介護などが挙げられますが、最終的にはオーナーとの協議や裁判所の判断に委ねられます。
途中解約の取り決めについては、定期借家契約を締結する前に必ず確認しておきましょう。
定期借家契約の賃貸物件を借りるメリット
定期借家契約の賃貸物件を借りるメリットは、以下のとおりです。
- 家賃や初期費用が安い傾向がある
- 短期間の契約ができる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
家賃や初期費用が安い傾向がある
定期借家契約の賃貸物件は、家賃や初期費用が相場よりも安い傾向があります。
契約の更新ができないというデメリットによって、入居者が見つからないという事態を回避するために、家賃を下げたり礼金を不要にしたりするケースが多いです。
短期間の入居などで契約を更新する必要がなければ、お得に物件を借りられる可能性があります。
短期間の契約ができる
定期借家契約は、入居者とオーナー双方に問題がなければ短期間の契約が可能です。
普通借家契約の場合、契約期間を1年未満にすると「期間の定めのない契約」とみなされ、オーナーに不利な契約となってしまいます。
しかし、定期借家契約にはそのような制約がないため、オーナーは契約期間を自由に設定できます。
一時的に物件を貸し出したいオーナーと、短期で住みたい入居者がマッチングすれば、定期借家契約が有効に使えるでしょう。
定期借家契約の物件事例
定期借家契約が使われる賃貸物件の事例として、以下のようなものがあります。
- オーナーが一時的に不在の分譲住宅
- 建物の解体時期が決まっている物件
- シェアハウスの物件
それぞれ詳しく解説します。
オーナーが一時的に不在の分譲住宅
オーナーが仕事で海外に赴任するなどで、一時的に不在となる分譲住宅を定期借家契約で貸し出すケースがあります。
定期借家契約を使う理由は、オーナーの帰国時期に合わせて入居者に確実に退去してもらうためです。
この場合、入居者は分譲マンションや築浅の一戸建てなど、オーナーが所有しているグレードの高い物件に住める可能性があるでしょう。
建物の解体時期が決まっている物件
建物が老朽化などで解体時期が決まっている物件は、定期借家契約が使われる可能性があります。
普通借家契約では、入居者の権利が強く保護されており、オーナーの都合で入居者に立ち退きを要求する場合、立ち退き料が必要になるケースが多いです。
しかし、定期借家契約では、契約期間が満了すれば入居者に退去してもらえるため、立ち退き料などを支払わずに済みます。
シェアハウスの物件
シェアハウスとは、リビングやキッチン、浴室などの設備を他の入居者と共有する賃貸物件です。
シェアハウスは入居者が設備を共有するため、ルールやマナーを守る必要があります。
悪質な入居者が住み続けてしまうと、他の入居者が迷惑するため、契約期間が満了すれば必ず退去させられる定期借家契約が使われるのです。
ルールやマナーを守る入居者のみと再契約することで、住みやすい環境づくりを実現できます。
まとめ
定期借家契約とは、契約期間が満了しても更新できない契約のことです。普通借家契約とは、契約の更新や途中解約が原則できないなどの点で異なります。
国土交通省の調査では、定期借家契約の認知度は約4割で、実際に契約されたのはわずか2.1%でした。
定期借家契約の賃貸物件は、相場よりも家賃や初期費用が安い傾向があります。
定期借家契約がよく使われる賃貸物件の事例としては、オーナーが一時的に不在の分譲住宅や建物の解体が決まっている物件、シェアハウスの物件などが挙げられます。
定期借家契約で賃貸物件を借りる際は、トラブルに発展しないために、契約の内容を十分に理解するようにしましょう。
iimon 編集部