賃貸物件の契約には、「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類あります。
ほとんどの契約が普通借家契約であるため、定期借家契約がどのような契約であるのか、途中で解約できるのかなど、疑問に感じる人も多いでしょう。
定期借家契約は、原則として途中で解約できませんが、例外的に途中で解約できるケースがあります。
この記事では、定期借家契約は途中で解約できるのか、解約できない場合の対処法を解説します。
定期借家契約でよくある質問も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
定期借家契約とは?
定期借家契約とは、契約期間が満了しても更新できない契約のことです。
契約期間が満了すると、入居者は退去しなければなりません。
ただし、オーナーが契約期間満了後も入居者が住むことを承諾すれば、再契約を結ぶことで延長できます。
定期借家契約は、オーナーが転勤などで一時的に自宅を貸す場合や、シェアハウスの物件で使われるケースが多いです。
普通借家契約との違い
普通借家契約とは、契約期間が満了しても更新できる契約のことです。
入居者が契約期間後も住み続けたい場合、オーナーは正当事由がなければ拒否できないため、更新されるのが一般的です。
一方、定期借家契約は契約期間が満了しても更新できない点で異なります。
なお、国土交通省の「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」によると、三大都市圏で結ばれた賃貸借契約のうち、普通借家契約が94.8%、定期借家契約が2.1%という結果でした。
つまり、賃貸借契約の約95%は普通借家契約であるといえます。
定期借家契約は途中で解約できない
定期借家契約は、原則として契約期間の途中で解約できません。
ただし、以下の要件を満たしていれば、例外的に途中で解約できるケースがあります。
- 【例外1】解約権留保特約がある
- 【例外2】中途解約権を行使する
- 【例外3】オーナーに違約金を支払う
それぞれ詳しく解説します。
【例外1】解約権留保特約がある
定期借家契約を結ぶ際に、解約権留保特約を結んでいた場合は解約できます。
解約権留保特約とは、契約期間内に中途解約を認める特約のことです。
定期借家契約を途中で解約したい場合、まずは契約書面に解約権留保特約の記載があるかを確認してみましょう。
【例外2】中途解約権を行使する
定期借家契約で解約権留保特約を結んでいない場合でも、入居者が以下の3つの条件を満たしていると、中途解約権を行使して途中で解約できます。
- 賃貸物件を居住目的で借りている
- 賃貸物件の床面積が200㎡未満である
- やむを得ない事情によって借り続けることが困難である
やむを得ない事情とは、転勤や入院、親の介護などが挙げられますが、最終的にはオーナーや裁判所の判断に委ねられます。
3つの条件を満たしている場合、解約を申し入れて1か月が経過すれば、契約を途中で解約できます。
【例外3】オーナーに違約金を支払う
契約期間の残りの期間の家賃を違約金としてオーナーに支払うことで、途中で解約できるケースもあります。
たとえば、契約期間が3年で2年6か月住んでいた場合、残りの6か月分の家賃をオーナーに支払うことで途中で解約できます。
契約期間の残りの期間が短ければ、違約金も少なくなるでしょう。
定期借家契約を途中で解約できない場合の対処法
定期借家契約を途中で解約できない場合、以下の対処法を考えましょう。
- オーナーに相談する
- 引っ越し先にかかる初期費用を抑える
それぞれ詳しく解説します。
オーナーに相談する
定期借家契約を途中で解約できないか、まずはオーナーに相談しましょう。定期借家契約を途中で解約できる条件に該当していなくても、オーナーが承諾すれば中途解約できます。
オーナーに相談する際は、以下の内容を伝えましょう。
- 途中で解約したい理由
- 途中で解約したい具体的な時期
- 途中で解約した場合の金銭の条件
誠意を持って伝えれば、オーナーに途中解約を認めてもらえる可能性が高くなります。
引っ越し先にかかる初期費用を抑える
定期借家契約を途中で解約できない場合、引っ越し先で必要な初期費用を抑えることで、金銭的な負担を軽減できます。
初期費用を抑えるには、以下の方法があります。
- フリーレント物件を選ぶ
- 仲介手数料が無料の不動産会社を選ぶ
- 敷金・礼金なしの物件を選ぶ
フリーレント物件とは、契約してから一定期間家賃が無料で住める物件のことです。
もし、定期借家契約を途中で解約できなくても、フリーレント物件で引っ越し先の家賃を無料にできれば、家賃を二重で支払う事態を回避できます。
他にも、仲介手数料や敷金・礼金なしの物件を選ぶことで、初期費用を抑えられます。
定期借家契約でよくある質問
ここでは、定期借家契約でよくある質問を2つ紹介します。
- 定期借家契約の賃貸物件を借りるメリット・デメリットは?
- 定期借家契約は公正証書で行う必要がある?
それぞれ詳しく解説します。
定期借家契約の賃貸物件を借りるメリット・デメリットは?
定期借家契約の賃貸物件を借りる入居者のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
定期借家契約のメリット | 定期借家契約のデメリット |
・家賃や初期費用が安い傾向がある ・短い期間でも契約できる ・分譲住宅に住める可能性がある | ・契約を更新できない ・原則として途中で解約できない ・物件の数が少ない |
定期借家契約は、契約を更新できないデメリットを補うために、家賃や初期費用が普通借家契約よりも安い傾向にあります。
また、定期借家契約はオーナーが自宅を一時的に貸し出す際によく使われるため、分譲住宅などグレードの高い物件を借りられるケースもあります。
単身赴任や出張などで短期間だけ借りることが決まっている場合は、定期借家契約の物件を選ぶことでお得に住める可能性があるでしょう。
定期借家契約は公正証書で行う必要がある?
定期借家契約は、借地借家法で以下のとおり、書面で交付する必要があるとされていますが、公正証書ではなく一般的な契約書でも問題ありません。
(定期借地権)
第二十二条 存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第一項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。
公正証書とは、公証役場で公証人が作成する「公文書」のことです。
公正証書にすることで、家賃の滞納や敷金の返還などでトラブルが発生した際に、裁判を起こさずに強制執行ができるようになります。
ただし、公正証書の作成は、5,000〜30,000円程度の費用が必要です。
トラブルのリスクと公正証書作成のコストを理解し、オーナーと入居者双方の意見を踏まえて決めるのが良いでしょう。
まとめ
定期借家契約は、原則として途中で解約できません。 ただし、以下の要件を満たすと、例外的に途中で解約できる可能性があります。
- 解約権留保特約がある
- 中途解約権を行使する
- オーナーに違約金を支払う
定期借家契約を途中で解約できない場合は、オーナーに相談したり、引っ越し先にかかる初期費用を抑えたりすることで対処しましょう。
定期借家契約の契約期間中に解約する可能性がある場合は、契約時に解約権留保特約を結んでおきましょう。
iimon 編集部