オーナーが賃貸物件を貸し出す際に、「定期借家契約」を条件にしている場合があります。
定期借家契約は、契約期間が過ぎると原則として入居者は退去しなければなりません。
ただし、定期借家契約であっても、オーナーの同意があれば再契約することは可能です。
再契約は一般的な契約更新とは異なるため、詳細を確認しておくことが大切です。
この記事では、定期借家契約の基礎知識や再契約にかかる費用について解説します。
定期借家契約を締結する際のポイント3選も紹介しているので、定期借家契約の賃貸物件を検討している人は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
定期借家契約の基礎知識
定期借家(ていきしゃっか)契約とは、契約期間が満了すると自動的に契約が終了する契約形態のことです。
契約期間の制約はなく、オーナーは自由に賃貸物件を貸し出す期間を設定できます。
定期借家契約では、原則として中途解約できませんが、入居者が以下の要件を満たしている場合は中途解約できます。
- 賃貸物件を居住目的で借りている
- 賃貸物件の床面積が200㎡未満である
- やむを得ない事情によって借り続けることが困難である
定期借家の途中解約について詳しく知りたい人は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:定期借家契約は途中で解約できる?解約できない場合の対処法もご紹介
普通借家契約との違い
普通借家契約とは、契約期間が満了しても更新できる契約形態のことです。
国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」によると、三大都市圏で締結された賃貸借契約のうち、普通借家契約が93.1%、定期借家契約が2.6%という結果でした。
つまり、賃貸借契約のほとんどは普通借家契約であるといえます。
定期借家契約は基本的に更新できない
普通借家契約は、基本的に入居者が解約の手続きをしない限り、自動的に契約が更新されます。
しかし、定期借家契約は、契約期間が過ぎると自動的に契約が終了するため更新できません。
オーナーの同意があれば再契約は可能
入居者が定期借家契約の期間満了後も住み続けたい場合、オーナーの同意があれば再契約を結ぶことが可能です。
再契約は、賃貸借契約を更新するのではなく新規契約として扱われます。
ただし、再契約を結ぶかどうかは、オーナーの意向に委ねられます。
契約期間満了後も住み続ける可能性がある場合は、普通借家契約を選ぶようにしましょう。
敷金礼金は必要?定期借家の再契約にかかる費用
定期借家契約の再契約時には、以下の費用がかかる場合があります。
- 事務手数料
- 仲介手数料
- 保証料
なお、敷金は初回契約時に支払ったものが引き継がれ、礼金は免除されるケースが大半です。
再契約時にかかる費用について、詳しく見ていきましょう。
事務手数料
事務手数料は、再契約に必要な書類の作成や手続きにかかる費用です。
家賃1か月分が一般的な相場ですが、不動産会社によって異なります。
仲介手数料
再契約は新規契約と同じ扱いになるため、不動産会社が仲介に入る場合は仲介手数料が発生します。
仲介手数料は、新規契約時と同様に家賃の0.5~1か月分程度かかります。
ただし、オーナーと直接契約を締結する場合、仲介手数料は不要です。
保証料
家賃保証会社を利用している場合、再契約時には普通借家契約の更新と同様に保証料を支払う必要があります。
保証料は、家賃の0.5~1か月分程度が一般的です。
家賃保証会社によって保証料の金額や支払い方法が異なるため、詳細は契約している家賃保証会社に確認しましょう。
定期借家契約を締結する際のポイント3選
定期借家契約を締結する際は、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 定期借家契約の理由を確認しておく
- 再契約時には家賃を値上げされる可能性がある
- 近隣の賃貸物件と比較する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 定期借家契約の理由を確認しておく
オーナーと賃貸借契約を締結する際は、定期借家契約の理由を確認しておくことがおすすめです。
定期借家契約にしている理由を確認することで、再契約の可能性を推測できるためです。
たとえば、オーナーが海外出張や実家に帰省など、一時的な不在期間だけ賃貸運用する場合、再契約の可能性は低くなります。
一方、入居者トラブルの回避が理由であれば、入居中に問題を起こさなければ再契約できる可能性は高いでしょう。
また、オーナーが将来的に建て替えや売却を予定している場合は、その時期によって再契約の可能性が変わります。
契約期間満了後も住み続ける可能性がある場合は、オーナーに定期借家契約の理由を確認し、再契約の可能性を推測したうえで検討しましょう。
2. 再契約時には家賃を値上げされる可能性がある
普通借家契約では、契約を更新しても原則として家賃は同じ金額ですが、定期借家契約の再契約時には、オーナーから家賃を値上げされる可能性があります。
定期借家契約の場合は、再契約によって新たな契約条件で締結できるためです。
家賃が値上げされるかや値上げ幅はオーナーによって異なりますが、あらかじめ値上げの可能性を考慮しておく必要があります。
3. 近隣の賃貸物件と比較する
定期借家契約を締結する前に、近隣の賃貸物件と比較することも重要です。
定期借家契約の賃貸物件は、契約を更新できないデメリットを補うために、オーナーが家賃を相場よりも安く設定している場合があります。
また、近隣で似た条件の普通借家契約の賃貸物件があれば、その物件を選ぶことで契約期間満了後も住み続けられます。
近隣の賃貸物件と比較して、家賃や契約期間が自分の希望に合っているか、メリットがあるかなどを確認しましょう。
定期借家契約の再契約でよくある質問
ここでは、定期借家契約の再契約に関するよくある質問を2つ紹介します。
- 定期借家契約の再契約は覚書でも問題ない?
- 定期借家契約満了の通知が来ない場合はどうしたら良い?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
定期借家契約の再契約は覚書でも問題ない?
定期借家契約の再契約は新規契約の扱いとなるため、覚書ではなく賃貸借契約書での締結が必要です。
再契約時には、以下の書類が必要になります。
- 重要事項説明書
- 定期借家契約締結に関する説明書
- 定期借家契約書
必要書類は不動産会社が準備しますが、書類の内容をしっかりと確認し、不明点があれば質問するようにしましょう。
定期借家契約満了の通知が来ない場合はどうしたら良い?
契約期間が1年以上の定期借家契約の場合、オーナーは契約期間満了の1年前から6か月前までの間に、入居者に対して契約が満了する旨を通知する必要があります。
通知が来なかった場合、入居者は契約期間が満了しても住み続けられます。
ただし、オーナーが忘れていた通知を行えば、入居者は通知が届いた日から6か月を経過するまでに退去しなければなりません。
まとめ
定期借家契約は、契約期間が過ぎると自動的に終了する契約形態です。
ただし、オーナーの同意があれば再契約することは可能です。
再契約時には事務手数料や仲介手数料、保証料などの費用が必要になる場合があります。
定期借家契約を結ぶ際は、契約の理由を確認し、再契約時に家賃が値上げされる可能性も考慮しておきましょう。
定期借家契約の特徴を理解したうえで、自分に合う契約形態の賃貸物件を選びましょう。
iimon 編集部