賃貸物件を借りる際に「礼金」を支払うことが多くあります。
「なぜ礼金を支払う必要があるのか?」 「家賃を支払う入居者がオーナーに礼金まで支払うのはおかしい!」
など疑問に感じる人も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、礼金を賃貸物件で支払う理由や、安く抑える方法を解説します。 礼金以外にかかる初期費用を抑える方法も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
礼金とは?
礼金とは、賃貸物件を借りる際にオーナーに対して支払う費用で「契約一時金」と表記されるケースもあります。 礼金は消費税が発生せず、支払っても退去時に返還されません。
礼金の有無は物件によって異なります。国土交通省の「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」によると、礼金の有無は以下のようになりました。
エリア | 礼金ありの割合 | 礼金なしの割合 |
首都圏 | 49.8% | 42.2% |
中京圏 | 21.1% | 60.0% |
近畿圏 | 48.7% | 47.4% |
平均 | 44.8% | 46.5% |
礼金ありの物件は首都圏で多く、中京圏では少ないなど、エリアによって傾向が異なる結果となりました。
また、礼金ありと回答した世帯に支払った家賃の月数を調査した結果、以下のようになりました。
礼金として支払った家賃の月数 | 割合 |
1か月未満 | 1.6% |
1か月分 | 69.4% |
1か月超2か月未満 | 5.2% |
2か月分 | 17.7% |
2か月超3か月未満 | 0.8% |
3か月分 | 4.4% |
礼金として支払った家賃の月数は、1か月分が69.4%と最多でした。 礼金の相場は、家賃の1〜2か月分と考えておきましょう。
礼金と敷金の違い
賃貸物件を借りる際に支払う礼金と似た費用に「敷金」があります。敷金は賃貸物件を借りる際に、担保として預ける費用です。
礼金は支払っても返還されませんが、敷金は家賃の滞納分や入居者負担による修繕費用などを差し引かれ、残った金額が退去時に戻ってきます。
敷金は礼金と同じく家賃の1〜2か月分が相場です。
礼金を支払う4つの理由
礼金を支払う理由として主に以下の4つがあります。
- 昔からの慣習として残っているため
- 家賃を下げるため
- 部屋のクリーニング費用に充てるため
- 広告宣伝費として使うため
それぞれ詳しく解説します。
1. 昔からの慣習として残っているため
礼金が存在しているのは、過去の慣習が現在まで残っていることが理由のひとつです。
かつて関東大震災が発生した際、多くの家屋が倒壊し住居が不足している状況のなか、優先的に住む場所を貸してもらえるようにオーナーにお金を渡していたという説があります。
また、高度経済成長期の時代は、多くの子どもが進学で上京しており、オーナーに対して子どもがお世話になる謝礼の意味合いでお金を渡していたという説もあります。
現在、賃貸物件を借りる際は不動産会社を通じて契約を締結することが多く、オーナーと直接やり取りするケースは少なくなりました。 しかし、このような慣習だけが「礼金」として現在まで残っているのです。
2. 家賃を下げるため
オーナーは空室の期間を短くするために、家賃を安くして入居者を募っているケースがあります。 家賃を安くすると賃料収入が減るため、オーナーは礼金を設定することで補填している場合があります。
3. 部屋のクリーニング費用に充てるため
入居者の退去後は、基本的にオーナー負担で部屋のクリーニングを行いますが、その費用を礼金として入居者から徴収しているケースがあります。 礼金の使い道に制限はなく、入居者にもわからないため、オーナーが出費を抑えるために礼金を設定していることがあります。
4. 広告宣伝費として使うため
広告宣伝費とは、オーナーが自分の物件を紹介してくれた不動産会社に支払う報酬です。 広告宣伝費は家賃の0.5〜1か月分が相場ですが、礼金を同額に設定することで、オーナーの自己負担をゼロにしているケースがあります。
広告宣伝費は、物件の条件が悪かったり空室が長期にわたって続いていたりするような物件で必要になるケースが多いです。
礼金を安く抑える方法
礼金を安く抑えるには、以下の方法を実践しましょう。
- 礼金の値下げ交渉を行う
- 礼金なしの物件を探す
それぞれ詳しく解説します。
礼金の値下げ交渉を行う
礼金の値下げ交渉を行うことで、安く抑えられる可能性があります。
礼金の値下げ交渉は、オーナーに直接行うのではなく、物件を紹介した不動産会社の担当者が入居者に代わって行うのが一般的です。不動産会社の担当者と良好な関係を構築できていれば、交渉に注力してもらえる可能性が高くなります。
そのため、不動産会社の担当者と接する際は、高圧的な言葉遣いや態度には気をつけましょう。
礼金なしの物件を探す
礼金の有無は物件によって異なるため、最初から礼金なしの物件を選べば礼金を支払う必要はありません。
ただし、敷金・礼金なしの物件は数が少なく、以下のような注意点もあります。
- 家賃が相場よりも高い可能性がある
- 物件の条件が悪いケースがある
- 退去費用が高くなる傾向がある
敷金や礼金をなしにする代わりに、家賃を高く設定している可能性があります。 また、条件が悪い物件の空室を早く埋める施策として、敷金や礼金をなしにしているケースがあります。
このような物件を見極めるには、周辺の家賃相場を把握し、内見で物件を入念にチェックすることが重要です。
礼金を安くできない場合は他の費用を抑えよう
礼金を安く抑えられなくても、他の初期費用を安くできれば、結果的に初期費用の負担を軽減できます。まずは、賃貸物件にかかる初期費用を見ていきましょう。
賃貸物件にかかる初期費用
賃貸物件を借りるのに必要な初期費用を以下にまとめました。
初期費用の内訳 | 費用相場 |
敷金 | 家賃1〜2か月分 |
礼金 | 家賃1〜2か月分 |
仲介手数料 | 家賃1か月分 |
前払い家賃 | 家賃1か月分 |
火災保険料 | 数千円〜数万円 |
合計 | 家賃4〜6か月前後 |
たとえば、家賃が8万円の賃貸物件にかかる初期費用は、30〜50万円が相場です。 他にも、鍵交換代や保証会社への保証料などが必要になるケースもあります。
物件によって必要な初期費用は異なるため、契約を締結する前に不動産会社から初期費用の見積もりをもらい、内訳を確認しておきましょう。
礼金以外にかかる初期費用を抑えるポイント
礼金以外の初期費用を抑えるには、以下の方法があります。
- 仲介手数料が安い不動産会社で契約する
- 閑散期に契約する
- フリーレント物件を選ぶ
それぞれ詳しく解説します。
仲介手数料が安い不動産会社で契約する
不動産会社が、集客目的で仲介手数料を半額や無料などのキャンペーンを実施している場合があります。 そのような不動産会社を選ぶことで、仲介手数料を安く抑えることが可能です。
ただし、仲介手数料が安い物件は一部のみであり、選べる物件数が少ないというデメリットがあります。
閑散期に契約する
初期費用を抑えたい場合は、5〜8月の閑散期に契約するのがおすすめです。
閑散期は物件を探す人が減ることで、空室が埋まりにくい傾向があります。オーナーとしても、空室は早く埋めたいと考えるため、初期費用を安くしたり値下げ交渉に応じてもらえたりする可能性が高くなります。
一方、2〜4月の繁忙期は物件を探す人が多くなるため、値下げ交渉などは難しくなるでしょう。 時間をかけると他の人に契約されてしまうリスクもあるため、入居の時期を調整できる場合は、閑散期に契約するのがおすすめです。
フリーレント物件を選ぶ
フリーレント物件とは、入居後の一定期間は家賃が発生しない物件のことです。 オーナーが空室を埋めるための施策として行うケースがあります。
フリーレントの期間は、数日〜2か月など物件によって異なります。一見お得のように感じますが、フリーレント物件には短期解約時の違約金があったり、家賃が相場よりも高かったりする可能性があるため注意が必要です。
まとめ
賃貸で礼金を支払う理由や、安く抑える方法を解説しました。
礼金はオーナーに対してお礼の意味合いで支払う費用で、家賃の1〜2か月分が相場です。
礼金を支払う理由のひとつに昔からの慣習がありますが、他にも家賃を下げたりクリーニング費用などに充てたりすることが挙げられます。
礼金を安く抑えるには、値下げ交渉を行うか、礼金なしの物件を探す方法があります。
初期費用の負担を抑えたい場合は、不動産会社の担当者に予算を伝え、礼金や仲介手数料の値下げ交渉にチャレンジしてみましょう。
iimon 編集部