賃貸物件を借りる際の契約には、「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。
それぞれの契約にはメリット・デメリットがあるため、入居者の状況に合わせて最適なものを選ぶようにしましょう。
この記事では、普通借家契約と定期借家契約のメリット・デメリットを解説します。 それぞれの契約に向いている人も紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
目次
普通借家契約とは?
普通借家契約とは、契約期間が満了しても更新できる契約形態です。
国土交通省の「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」によると、三大都市圏で結ばれた賃貸借契約のうち、普通借家契約は94.8%、定期借家契約は2.1%という結果でした。
普通借家契約の契約期間は2年が一般的で、入居者が解約手続きを行うまでは、同じ条件で更新されます。
なお、普通借家契約で契約期間が1年未満の場合、借地借家法で入居者保護の観点から「期間の定めのない契約」とみなされます。
オーナーは6か月前、入居者は3か月前に解約の申し入れが可能ですが、オーナーが解約を申し入れる場合は、正当事由が必要です。
正当事由の例としては、オーナーが建物を売却したり、建物の老朽化で早急に取り壊す必要があったりなどが挙げられますが、最終的には裁判での判断に委ねられています。
期間の定めのない契約になると、オーナーは更新料を請求できないなどのデメリットが発生します。
参考:e-GOV 法令検索|借地借家法 第二十七条〜第二十九条
普通借家契約のメリット
普通借家契約のメリットは以下のとおりです。
- 契約を更新して長く住める
- 一方的に家賃を値上げされない
それぞれ詳しく解説します。
契約を更新して長く住める
普通借家契約は、契約期間が満了しても解約手続きをしない限り、入居者は契約を更新して住み続けることが可能です。
ただし、契約を更新するには、更新料が必要になる場合があります。
また、中途解約は契約書で取り決めがあればできますが、特約で違約金の支払いなどが設定されているケースもあるため、契約書の内容は細かく確認しておきましょう。
なお、オーナーが契約の更新を拒否するには、正当事由が必要とされており、一方的に入居者を退去させられません。
普通借家契約であれば、入居者は長期的に安心して住まいを確保できるメリットがあります。
一方的に家賃を値上げされない
普通借家契約では、オーナーが一方的に家賃を値上げできません。
家賃を改定するには、入居者の同意が必要です。
仮に、オーナーが家賃の値上げを提案しても、入居者が同意しなければ値上げできません。
普通借家契約は、入居者の権利が保護されている契約形態であるといえます。
普通借家契約のデメリット
普通借家契約には大きなデメリットはありませんが、入居者が契約を更新したり、家賃の値上げが難しいことを考慮したりして、オーナーがそもそもの家賃を高く設定する可能性があります。
そのため、エリアの家賃相場などを調べ、相場よりも家賃が高くないかを確認しておきましょう。
普通借家契約が向いている人
普通借家契約は、以下のような人に向いています。
- 長期間同じ物件に住みたい人
- 家賃の値上げリスクを避けたい人
普通借家契約は、長期間住み続ける予定がある人に向いています。
職場や学校が近くにあったり、子どもを転校させたくなかったりする場合は、普通借家契約がおすすめです。
また、家賃の値上げは家計にとって大きな負担になります。
普通借家契約では、オーナーが一方的に家賃を値上げできないため、入居者は家賃の値上げリスクを回避できます。
定期借家契約とは?
定期借家契約とは、契約期間が満了しても更新できない契約形態です。
契約期間に制限はなく、短期から長期まで柔軟に設定できます。
定期借家契約は、オーナーが一時的に住まいを空けている間のみ賃貸として運用したり、店舗などの物件で使われたりするケースが多いです。
定期借家契約のメリット
定期借家契約のメリットは以下のとおりです。
- 短期間の契約ができる
- 普通借家契約よりも家賃が安い傾向がある
それぞれ詳しく解説します。
短期間の契約ができる
定期借家契約では、入居者とオーナー双方が合意すれば、短期間の契約が可能です。
契約期間が1年未満でも契約でき、一時的な住まいが必要な人にとっては便利な契約形態であるといえます。
普通借家契約よりも家賃が安い傾向がある
定期借家契約は、契約期間が明確に定められているデメリットを補うために、オーナーが家賃を安くしている傾向があります。
立地の良い物件で、定期借家契約で入居者を募集している場合、お得に物件を借りられる可能性があります。
また、オーナーが一時的に住まいを貸し出しているような場合、分譲マンションや分譲一戸建てなどの物件に住めるケースもあるでしょう。
住む期間が決まっていたり、家賃を重視したりする人は、定期借家契約を検討するのもひとつの方法です。
定期借家契約のデメリット
一方、定期借家契約のデメリットは以下のとおりです。
- 契約を更新できない
- 中途解約できない場合が多い
- 再契約時に家賃が高くなる可能性がある
- 物件の数が少ない
それぞれ詳しく解説します。
契約を更新できない
定期借家契約は、契約期間が満了しても更新できません。
入居者が住み続けたい場合は、新たに契約を結ぶ必要があります。
ただし、再契約を結ぶかどうかはオーナー次第です。
オーナーが再契約に応じない場合、入居者は退去しなければなりません。
中途解約できない場合が多い
定期借家契約は、原則として中途解約できない場合が多いです。
中途解約した場合、残りの期間の家賃を請求される可能性があります。
ただし、転勤や親の介護など、入居者にやむを得ない正当事由があれば、ペナルティなしで解約できるケースもあります。
再契約時に家賃が高くなる可能性がある
定期借家契約で再契約を結ぶ際、オーナーが家賃の値上げを要求するケースがあります。
普通借家契約とは異なり、定期借家契約では家賃の改定に入居者の同意は必要ありません。
そのため、再契約時に家賃が高くなるリスクを想定しておく必要があります。
物件の数が少ない
賃貸物件の契約形態の大半が普通借家契約であるため、定期借家契約の物件はなかなか見つからない可能性があります。
そのため、無理に定期借家契約の物件にこだわらず、希望条件に合う物件を探すほうが良いでしょう。
定期借家契約が向いている人
定期借家契約は、以下のような人に向いています。
- 短期間の入居を予定している人
- 家賃を少しでも安くしたい人
例えば、単身赴任や出張などで、一時的に住まいが必要な人には定期借家契約が向いています。
契約期間が満了した際に確実に退去する場合は、最適な契約だといえます。
また、定期借家契約は、普通借家契約よりも家賃が安い傾向にあるため、毎月の出費を抑えたい人にもおすすめです。
ただし、家賃だけで比べるのではなく、退去費用や引っ越し費用なども考慮したうえで判断することが重要です。
まとめ
普通借家契約と定期借家契約をまとめると、以下のようになります。
契約形態 | 普通借家契約 | 定期借家契約 |
契約期間 | 2年が一般的 | 制限なし |
契約の更新 | できる (オーナーに正当事由がある場合は除く) | できない (再契約が必要) |
中途解約 | 取り決めがあればできる | 原則できない (やむを得ない事情がある場合は除く) |
向いている人 | ・長期間同じ物件に住みたい人 ・家賃の値上げリスクを避けたい人 | ・短期間の入居を予定している人 ・家賃を少しでも安くしたい人 |
普通借家契約は入居者の権利が強いため、長期的に物件に住む人にはおすすめですが、定期借家契約よりも家賃が高い傾向があります。
一方、定期借家契約は短期間の入居や家賃を抑えたい人におすすめですが、契約の更新ができないデメリットがあります。
賃貸物件を選ぶ際は、入居者の状況やニーズに合わせて、どちらの契約形態にするのかを選ぶようにしましょう。
iimon 編集部