普通借家契約で2年契約が多い理由とは?途中解約や更新にかかる費用も解説

更新日:2024.06.21

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賃貸物件を借りる際には賃貸借契約を締結しますが、ほとんどの物件で契約期間が2年に設定されていることに疑問を感じた人もいるでしょう。

賃貸借契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類ありますが、普通借家契約であることが大半です。

普通借家契約で2年契約が多いのは、1年未満にするとオーナーに不都合があり、3年にすると、入居者とオーナー双方にとって長く感じることが大きな理由です。

この記事では、普通借家契約で2年契約が多い理由について詳しく解説します。

契約期間内の途中解約や、更新にかかる費用も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

普通借家契約とは?

普通借家契約とは、契約期間が満了しても更新できる契約のことです。

国土交通省の「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」によると、三大都市圏で締結された賃貸借契約のうち、普通借家契約が94.8%、定期借家契約が2.1%という結果でした。

つまり、賃貸物件を借りる契約のほとんどが普通借家契約であるといえます。

定期借家契約との違い

定期借家契約とは、契約期間が満了しても更新できない契約です。

そのため、入居者は契約期間が満了すると退去しなければなりません。

ただし、オーナーが了承すれば、再契約を結ぶことは可能です。

定期借家契約は、オーナーが一時的に別の場所に住んでいる間のみ賃貸として運用したり、事業用の店舗などで使われたりする事例が多いです。

普通借家契約で2年契約が多い理由

普通借家契約で2年契約が多い理由は、借地借家法の関係があります。

普通借家契約で契約期間が1年未満の場合、借地借家法による入居者保護の観点から「期間の定めのない契約」とみなされます。

期間の定めのない契約になると、入居者は更新せずに住み続けることが可能です。

そうなると、オーナーは入居者に更新料などを請求できず、得られる収入が減少してしまいます。

期間の定めのない契約では、オーナーは6か月前、入居者は3か月前に解約の申し入れが可能ですが、オーナーから解約する場合は正当事由が必要です。

正当事由の事例としては、オーナーが建物を売却する事情があったり、建物の老朽化で解体する必要があったりなどが挙げられますが、最終的には裁判で判断されます。

一方、普通借家契約で3年契約になると、入居者にとっても長く感じやすいため、1年と3年の間の2年で設定されているのです。

オーナーにとっても、契約期間が3年になると、更新料の請求回数が少なくなるデメリットがあります。

つまり、入居者とオーナーどちらにとっても、ちょうど良い契約期間が2年であるといえます。

参考:e-GOV 法令検索|借地借家法 第二十七条〜第二十九条

2年契約でも途中解約は可能

普通借家契約において、2年契約であっても基本的に途中解約は可能です。

ただし、普通借家契約の解約予告期間は1か月で定められているケースが多いため、退去日の1か月以上前に解約の手続きを行わなければ、違約金が発生する可能性があります。

途中解約については、賃貸借契約書に記載があるため、事前に確認しておきましょう。

普通借家契約のメリット

普通借家契約のメリットは以下のとおりです。

  • 契約を更新できる
  • 一方的に家賃を値上げされない

それぞれ詳しく解説します。

契約を更新できる

普通借家契約は、契約期間が満了しても入居者が解約手続きを行わなければ、契約を更新して住み続けられます

オーナーからの解約は、正当事由がなければできないため、長期にわたって借りられます。

ただし、契約を更新するには、更新料が必要になるケースが大半です。

普通借家契約は、入居者の権利が強いため、長期的に安心して住まいを確保できます

一方的に家賃を値上げされない

普通借家契約では、オーナーが家賃を値上げしたくても、強制的にはできません。

家賃を改定するには、入居者の同意が必要です。

つまり、オーナーが家賃の値上げを申し入れても、入居者が拒否すれば値上げできません。

入居者にとっては、家賃が値上げされる心配がないため、安心して生活を送れます。

普通借家契約のデメリット

普通借家契約に大きなデメリットはありません

ただし、入居者が長期で住んだり、家賃の値上げができなかったりすることを考慮して、オーナーが家賃を相場よりも高く設定して募集している可能性があります。

エリアの家賃相場を自分で調べ、相場よりも家賃が高く設定されていないかを確認しておきましょう。

普通借家契約の更新にかかる費用

普通借家契約を更新するには、以下の費用がかかるケースがあります。

  • 普通借家契約の更新料
  • 火災保険の更新料
  • 保証会社の更新料

それぞれ詳しく解説します。

普通借家契約の更新料

普通借家契約を更新する際には、更新料を請求される場合があります。

前述の国土交通省の調査によると、三大都市圏で更新料を請求された世帯は45.8%でした。

地域ごとの更新料の相場は以下のとおりです。

更新料の金額

首都圏

中京圏

近畿圏

三大都市圏

家賃1か月未満

4.0%

31.3%

18.4%

7.9%

家賃1か月分

84.0%

37.5%

57.9%

77.2%

家賃1か月超2か月未満

3.5%

-

-

2.8%

家賃2か月分

8.0%

18.8%

15.8%

9.8%

家賃2か月超

0.5%

12.6%

7.9%

2.4%

※出典国土交通省|令和4年度 住宅市場動向調査報告書

首都圏や近畿圏は、更新料として家賃1か月分を請求されるケースが多くを占めており、中京圏では家賃1か月未満も多いことがわかります。

普通借家契約を締結する際は、初期費用とあわせて更新料の金額も確認しておきましょう。

火災保険の更新料

賃貸物件の契約時に火災保険に加入した場合は、火災保険の更新料も必要です。

火災保険の更新料は、契約のプランにもよりますが、1〜2万円程度支払うケースが多いです。

保証会社の更新料

家賃保証会社を利用している場合は、保証会社の契約更新で更新料が必要になるケースがあります。

家賃保証会社(賃貸保証会社)とは、入居者が家賃滞納した際に、オーナーに家賃の支払いを保証する会社のことです。

保証会社の更新料は、1〜2年ごとに1〜2万円程度支払うケースが多いです。

更新の際に焦らないように、事前に把握しておきましょう。

まとめ

「普通借家契約」は、契約期間が満了しても更新できる契約のことです。

契約期間が満了しても更新できない「定期借家契約」もありますが、賃貸物件を借りる契約のほとんどが普通借家契約です。

普通借家契約で2年契約が多い理由は、契約期間を1年未満にすると、入居者保護の観点から「期間の定めのない契約」とみなされてしまうことが挙げられます。

また、3年契約は、入居者とオーナーどちらにとっても長く感じやすいため、2年がちょうど良い契約期間とされているのです。

なお、2年契約の途中で解約することも可能ですが、特約で違約金が定められているケースがあります。

他にも、解約予告期間として1か月以上前に解約手続きが必要な場合が多いため、事前に確認しておきましょう。

普通借家契約は、期間が満了しても更新できますが、一般的には家賃1か月分の更新料が必要です。

それに加えて、火災保険や保証会社の更新料が必要になるケースもあります。

契約期間・解約の手続き・物件の更新にかかる費用などは、すべて賃貸借契約書に記載されているため、細かく知りたい場合は、賃貸借契約書を確認しましょう。

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iimon 編集部

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