賃貸物件に住んでいると、契約更新のタイミングで「更新料」が必要になるケースがあります。 毎月の家賃に加えて更新料も支払わなければならないのは、負担に感じる方も多いでしょう。
そこでこの記事では、賃貸物件の更新料は値下げ交渉できるのかについて解説します。 更新料の相場や更新料なし物件の注意点なども解説しているため、ぜひ最後までご覧ください。
目次
賃貸物件の更新料とは?
賃貸物件の更新料とは、賃貸借契約で定めた契約期間を更新する際に、オーナーに支払う手数料のことです。 初回の賃貸借契約期間は2年が一般的で、期間満了後も住み続ける場合は更新手続きが必要です。更新手続きの案内は、通常契約期間満了の1〜3か月前に届きます。
国土交通省の「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」によると、賃貸物件に居住している世帯のうち、更新料がある世帯は45.8%で、支払った金額は家賃1か月分が77.2%と最多でした。
ここでは、更新料について以下の順に解説します。
- 地域ごとの更新料の有無や相場
- 更新料を支払う理由
- 契約を更新しなければ更新料は不要
それぞれ詳しく見ていきましょう。
地域ごとの更新料の有無や相場
前述の国土交通省の調査によると、更新料の有無は地域によって以下のような特徴があります。
更新料の有無 | 首都圏 | 中京圏 | 近畿圏 | 三大都市圏 |
更新料あり | 63.3% | 18.9% | 25.3% | 45.8% |
更新料なし | 22.0% | 52.6% | 67.5% | 39.2% |
更新料ありの物件は首都圏で63.3%と多いですが、中京圏や近畿圏では少ないことがわかります。
続いて、地域ごとの更新料として支払った金額を見てみましょう。
更新料の金額 | 首都圏 | 中京圏 | 近畿圏 | 三大都市圏 |
家賃1か月未満 | 4.0% | 31.3% | 18.4% | 7.9% |
家賃1か月分 | 84.0% | 37.5% | 57.9% | 77.2% |
家賃1か月超2か月未満 | 3.5% | - | - | 2.8% |
家賃2か月分 | 8.0% | 18.8% | 15.8% | 9.8% |
家賃2か月超 | 0.5% | 12.6% | 7.9% | 2.4%[3] |
首都圏や近畿圏は、更新料が家賃1か月分の物件が大半を占めており、中京圏では家賃1か月未満も多いことがわかります。
調査の結果から、更新料の相場は家賃1〜2か月分といえるでしょう。
更新料を支払う理由
更新料を支払う理由として、2011年の最高裁では以下のように判断されました。
「更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当である。」
つまりオーナーからすると、更新料は家賃を安くする代わりにもらうもの、継続して住居を提供することによる謝礼、という意味合いで考えられているのです。
契約を更新しなければ更新料は不要
賃貸借契約を更新せずに引っ越す場合は、更新料を支払う必要はありません。 ただし、オーナーや管理会社に、賃貸借契約を解約し引っ越すことを早めに通知しなければなりません。
賃貸契約書には退去する際の予告期間が記載されています。 退去の1か月前までに通知するのが一般的ですが、契約によっては3か月前などと定められている物件もあります。
契約の更新時期に引っ越す際は、早めにオーナーや管理会社に連絡しておきましょう。
賃貸物件の更新料は値下げ交渉できる?
賃貸物件の更新料を値下げ交渉できるかは、契約書に更新料について記載されているかがポイントです。
契約書に更新料の記載がある場合、基本的に記載の金額を支払う必要があるため、値下げ交渉は難しいでしょう。
2011年の最高裁判例では、1年更新で家賃2か月分の更新料を適法としており、2012年の大阪高裁判例では、1年更新で家賃3.12か月分でも適法と判断しています。
したがって、1年更新で家賃3か月以下の更新料であれば法外に高いとはいえず、値下げ交渉のハードルも高いでしょう。 しかし、長く住んでいたりオーナーと良好な関係が構築できていたりする場合は、考慮してもらえる可能性があります。
もし、契約書に更新料の記載がなければ、更新料の支払いに合意していないことになるため支払う必要はありません。
更新料なしの賃貸物件の注意点
更新料の有無は賃貸物件によって異なるため、更新料を支払いたくない場合は最初から更新料なしの物件を探すのが無難です。
ただし、更新料なしの賃貸物件は、以下の注意点を押さえておきましょう。
- 家賃や礼金などが高い可能性がある
- 物件の条件が悪い可能性がある
それぞれ詳しく解説します。
家賃や礼金などが高い可能性がある
更新料なしの賃貸物件では、家賃や礼金などの費用が高い可能性があります。更新料をなしにする代わりに、他の費用に上乗せされていることが考えられるためです。
更新料がないからと安易に契約せず、家賃が周辺の相場よりも高くないか、初期費用の合計額が高くないかを確認しておきましょう。
物件の条件が悪い可能性がある
更新料なしでも家賃や礼金が高くない場合は、物件の条件が悪い可能性があります。駅から遠い・築年数が古い・治安が悪いなどのデメリットがある賃貸物件は、新しい入居者を探すのに時間がかかる場合があります。
そこで物件に興味を持ってもらうために、更新料なしで募集しているケースがあるのです。更新料の有無だけでなく、物件や周辺環境を入念に確認し、納得したうえで入居しましょう。
賃貸物件の更新料に関するよくある質問
賃貸物件の更新料に関するよくある質問を3つ紹介します。
- 更新料を支払わないとどうなる?
- 更新料に消費税は必要?
- 契約更新時に更新料以外に支払う費用は?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
更新料を支払わないとどうなる?
賃貸借契約に更新料の記載があるにもかかわらず支払わなかった場合、オーナーに契約を解除され、立ち退きを命じられる可能性があります。
更新料を支払わないことは契約不履行にあたり、オーナーが契約を解除する「正当な理由」にあたるためです。
また、更新料の支払いが遅れた場合、その期間の遅延利息を請求される可能性があります。
更新料の支払いは忘れないように注意しましょう。
更新料に消費税は必要?
居住用の賃貸物件の場合は更新料に消費税はかかりません。
ただし、事務所や店舗など事業用で賃貸物件を借りている場合は、更新料に消費税が課税されます。
契約更新時に更新料以外に支払う費用は?
契約更新時には、賃貸物件の更新料以外にも以下の費用が必要になる可能性があります。
- 火災保険の更新料(1〜2万円程度)
- 保証会社の保証料や更新料(1〜2万円程度)
- 管理会社の更新事務手数料(数千〜数万円程度)
いずれも請求元の会社によって金額は変動しますが、詳細については賃貸借契約書に記載されています。契約更新時に思わぬ出費で困ることがないように、事前に把握しておきましょう。
まとめ
賃貸物件にかかる更新料について、値下げ交渉が難しい理由や更新料なし物件の注意点などを解説しました。
賃貸物件の更新料は、一般的に1〜2年ごとの賃貸借契約更新のタイミングで必要になり、家賃の1〜2か月分が相場です。賃貸借契約書に更新料の支払いが記載されていれば、値下げ交渉は難しいでしょう。
更新料なし物件は、家賃や礼金が相場よりも高かったり条件が悪かったりするケースがあるため、周辺相場や物件状況などを調べておくことが重要です。
賃貸物件を選ぶ際は家賃や礼金だけで判断せず、更新料の有無や金額も確認しましょう。
iimon 編集部