賃貸物件を借りると、毎月家賃を支払う必要があります。 しかし、多忙でつい忘れてしまうことや、病気やけが、失業など思わぬアクシデントで家賃を滞納してしまう可能性は誰しもあるでしょう。
実際のところ、一度家賃を滞納したからといってすぐに強制退去にはなりません。
家賃の滞納を数回繰り返し、管理会社や保証会社から督促の連絡があっても支払わなければ、強制退去に発展する事態になります。
ただし、強制退去にならなくても、家賃を滞納すると日常生活に悪影響を及ぼす事態になる恐れがあります。
そこで本記事では、家賃を滞納してから強制退去になるまでの目安や流れを解説します。 家賃滞納のリスクや、強制退去にならないための対処法4選も紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
目次
強制退去になるのは家賃滞納3か月以上が目安
家賃の滞納で強制退去になるのは、滞納期間3か月がひとつの目安です。
オーナーが賃貸借契約を解除するには、入居者が「信頼関係を破壊した」といえるほど重大な契約違反があったかどうかがポイントになります。
契約の解除について、民法では以下のように定められています。
(催告による解除) 第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。 |
1〜2か月程度の家賃滞納では、信頼関係が破壊されたとはいえず、強制退去が認められないのが一般的です。
滞納期間が3か月を過ぎると、一時的な滞納ではなく信頼関係が破綻していると判断されるケースが多く、裁判でも強制退去を認める判決が下されやすくなります。
家賃を滞納するとどうなる?
家賃を滞納すると、最悪の場合強制退去になります。家賃の滞納から強制退去までの一般的な流れは以下のとおりです。
- 入居者本人へ家賃支払いの督促が入る
- 連帯保証人・家賃保証会社に連絡される
- 内容証明郵便の督促状が届く
- 賃貸借契約を解除される
- 裁判所へ明け渡し訴訟を請求される
- 裁判・判決が行われる
- 強制退去が執行される
それぞれ詳しく解説します。
1. 入居者本人へ家賃支払いの督促が入る
家賃を期日までに支払わなければ、管理会社やオーナーから家賃未入金の連絡が入ります。忘れていた場合はすぐに対応しましょう。
2. 連帯保証人・家賃保証会社へ連絡される
入居者に連絡しても家賃の支払いがなければ、連帯保証人や家賃保証会社に連絡が入ります。
連帯保証人から家賃の支払いがあれば問題は解決しますが、それでも家賃が支払わなければ次の段階に進みます。
3. 内容証明郵便の督促状が届く
長期にわたって家賃の滞納が続けば、内容証明郵便の督促状が送付されます。
内容証明郵便とは、いつ・どこで・どのような内容の文書を誰から誰に送ったのかを証明する郵便です。 裁判で重要な証拠になるため、内容証明郵便で送付されます。
督促状には、滞納している家賃の金額や支払い期限などが詳しく明記されています。 期限内に支払わなければ、契約を解除する内容も記載されているのが一般的です。
4. 賃貸借契約を解除される
督促状に記載の期限までに家賃を支払わなければ、賃貸借契約の解除と法的措置がとられます。 賃貸借契約が解除されると、入居者は物件を不法占拠している状態になるため、本来であれば早急に物件を退去しなければなりません。
5. 裁判所へ明け渡し訴訟を請求される
入居者が督促に応じないことで「家賃を支払う意思がない」とみなされ、オーナーから裁判所へ強制退去を要求する法的措置「明け渡し訴訟」の請求が行われます。
6. 裁判・判決が行われる
明け渡し訴訟の請求後に、双方の主張や立証を踏まえて裁判所が判決を下します。
7. 強制退去が執行される
裁判にてオーナーの勝訴が認められた場合、入居者は定められた期日までに退去する必要があります。 期日を過ぎても入居者が退去しない場合は、執行官によって強制退去が行われ、家具や家財も撤去されます。
家賃を滞納するリスク
家賃を滞納すると、以下のようなリスクがあります。
- 契約解除・強制退去になる可能性がある
- 信用情報に傷がつく
- 遅延損害金を支払う必要がある
それぞれ詳しく解説します。
契約解除・強制退去になる可能性がある
前章で解説したように、家賃の滞納が続けば最終的に賃貸借契約が解除され、強制退去になります。 オーナーが入居者を強制退去させるまでにかかった費用は、入居者が支払わなければなりません。
信用情報に傷がつく
保証会社から督促を受けても家賃を支払わず、入居者に代わって保証会社がオーナーに家賃を支払った場合は、信用情報機関に滞納履歴が記載されます。
滞納履歴が記載されると、返済能力に問題ありとみなされ、クレジットカードの新規作成やローンを組めなくなる、いわゆる「ブラックリスト入り」の状態になってしまいます。
スマホを購入する際の分割払いもできなくなるため、日常生活に大きな影響を及ぼすでしょう。
遅延損害金を支払う必要がある
家賃を滞納すると、滞納期間に応じて遅延損害金が加算されます。 遅延損害金の上限は年率14.6%と法律で定められており、賃貸借契約書に記載がない場合は、原則年率3%で計算します。(※2024年2月時点)
たとえば、遅延損害金の年率14.6%で家賃6万円を3か月(90日)滞納した場合、遅延損害金は以下のように求めることが可能です。
6万円×14.6%×90日÷365日=2,160円 |
また、保証会社から督促手数料などを請求される場合もあるため注意しましょう。
家賃を払えない場合の対処法4選
家賃を払えないとわかったら、以下の対処法を考えましょう。
- 管理会社やオーナーに連絡する
- 家族や連帯保証人に借りる
- 家賃の安い物件に引っ越す
- 公的支援制度を活用する
家賃を滞納するとリスクが大きくなるため、対処法を確認して早めに行動しましょう。
1. 管理会社やオーナーに連絡する
家賃が払えないとわかったら、すぐに管理会社やオーナーに連絡しましょう。まずは謝罪をして、支払う意思があることを伝えるのが重要です。 連絡する際は、いつまでに・いくらであれば支払えるのかを具体的に伝えましょう。
保証会社から連絡があった場合も同様です。 悪質と判断されると信用情報に傷がつきやすくなるため、誠意ある対応を心がけましょう。
家賃を支払える目処がある場合は、分割払いをお願いするのもひとつの方法です。 家賃の滞納は、相手に迷惑をかけていることを忘れないようにしましょう。
2. 家族や連帯保証人に借りる
家賃の滞納が一時的なものである場合、家族や連帯保証人に立て替えを依頼する方法があります。 家族に借りることで家賃滞納による遅延損害金を支払わずに済み、信用情報に傷がつくことを避けられます。
家族に立て替えてもらった場合でも、関係が悪化しないようにいつまでに返すかなど詳しく決めておきましょう。
3. 家賃の安い物件に引っ越す
家賃が家計を圧迫している状況であれば、家賃の安い物件に引っ越すのもおすすめです。
無理なく家賃を返済するには、手取り額の3分の1以下に抑えるようにしましょう。 たとえば、手取り額が20万円の場合、家賃は6万円以下が目安です。
家計を見直し、無理なく家賃を返済できる物件に引っ越すことで、家賃滞納のリスクを回避できるでしょう。
4. 公的支援制度を活用する
家賃や生活に必要な資金が不足している場合、一定の要件を満たせば以下の公的支援制度を活用できます。
- 住居確保給付金
- 生活福祉資金貸付制度
- 生活保護制度
住居確保給付金
住居確保給付金とは、離職や廃業などによって住む場所を失う恐れがある人に対して、家賃相当額を市から賃貸物件のオーナーに支給する制度です。 離職・廃業後2年以内や、預貯金合計額が一定以下などの条件を満たせば、家賃(上限あり)を原則3か月間支給してもらえます。
支給額は市区町村や世帯人数によって異なりますが、東京都特別区の場合、支給される上限額は以下のとおりです。
世帯人数 | 支給上限額(月額) |
1人 | 53,700円 |
2人 | 64,000円 |
3人 | 69,800円 |
※参照元:住居確保給付金制度概要|厚生労働省
住居確保給付金を活用することで、家賃の負担を軽減できます。
※参考:住居確保給付金|厚生労働省
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度とは、低所得者や高齢者などの生活を支援するための貸付制度です。生活再建までの間に必要な生活費用として原則3か月間、単身世帯では月額15万円、2人以上の世帯では月額20万円を上限で借りられます。
なお、敷金や礼金など賃貸物件の初期費用においても、要件を満たせば最大40万円貸付してもらえます。
ただし、あくまで貸付となるため、期限が過ぎれば返済が必要です。 保証人ありの場合は、無利子で借りられるため、生活費用に困った際は活用しましょう。
※参考:生活福祉資金貸付制度|厚生労働省
生活保護制度
生活するのが困難になった最終手段として、生活保護制度があります。 「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」制度で、厳正な審査に通過すれば生活保護を受給できます。
ただし、自由にお金を使えず、住む場所や所有物に制限がかかるデメリットがあるため、制度を理解したうえで申請しましょう。
※参考:生活保護制度|厚生労働省
まとめ
家賃を滞納してから強制退去までの流れや滞納のリスク、家賃を払えない場合の対処法4選などを解説しました。
家賃を滞納して強制退去になるのは、滞納期間3か月がひとつの目安です。家賃を滞納してしまうと信用情報に傷がつき、ローンが組めなくなる可能性があります。
家賃の滞納は、入居者自身にとってデメリットしかありません。
家賃が払えない場合は、必ず管理会社やオーナーに連絡し、支払いの目処を伝えましょう。家賃の安い物件に引っ越したり、公的支援制度を活用したりするのもおすすめです。
家賃を滞納すると、さまざまな人に迷惑がかかり、自分の日常生活に悪影響も及ぼします。家賃を払えないことがわかったら、早めに対処するようにしましょう。
iimon 編集部