賃貸物件を退去する際に、いきなり高額な退去費用を請求されて納得いかないと思った経験はありませんか?
2022年に独立行政法人国民生活センターに寄せられた、賃貸物件の退去費用(原状回復)に関するトラブルの相談件数は12,856件もあり、多くの人がトラブルに悩んでいることがわかります。
そこでこの記事では、賃貸物件の退去費用に納得いかないときの対処法を解説します。退去費用のトラブルを防ぐ方法も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
※出典元:独立行政法人日本国民生活センター|賃貸住宅の原状回復トラブル
目次
【賃貸】退去費用とは?
賃貸物件における退去費用とは、入居者が退去する際の原状回復にかかる費用のことです。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、原状回復は以下のように定義されています。
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」
※引用元:国土交通省|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
原状回復は「入居者が賃貸物件を借りる前の状態に戻すこと」と思われがちですが、実は国土交通省がそうではないことを明言しています。
退去費用は入居者がすべて負担するのではなく、入居者とオーナーがそれぞれ内容に応じて負担するのが一般的です。 また、賃貸借契約時に敷金を払っている場合、入居者が負担する退去費用を敷金から差し引かれ、残った分が返金されます。
入居者が負担する退去費用
賃貸物件の退去費用のうち、入居者の故意や過失によるものは入居者が負担する必要があります。
たとえば、以下の修繕にかかる費用は入居者が負担しなければなりません。
- 入居者の不注意でつけたキズ・汚れ
- 家具などを引きずった際についたキズ
- 掃除を怠ったことによるカビや汚れ
- たばこの煙による壁紙の黄ばみ
- ペットがつけたキズ
また、賃貸借契約時に退去費用に関する特約が説明され、承諾したものは原則として入居者が負担する必要があります。
オーナーが負担する退去費用
経年劣化や通常の使用による損耗・キズなどの修繕費用は、オーナーが負担するのが原則です。具体的には、以下のような内容が該当します。
- 日焼けによる畳や壁紙の変色
- 入居者退去によるハウスクリーニング
- フローリングのワックスがけ
- 経年劣化による設備の故障
東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」では、入居者とオーナーの費用負担の考え方が示されています。
※出典元:東京都|賃貸住宅トラブル防止ガイドライン
あくまで一般的な例示となり、損耗の程度によっては判断が異なるケースがあります。 費用負担の区分が入居者なのかオーナーなのかわからない場合は、ガイドラインを参考にしましょう。
退去費用に納得いかないときの対処法
請求された退去費用に納得いかないときは、以下の対処法を検討しましょう。
- 賃貸借契約書やガイドラインを確認する
- 管理会社(またはオーナー)に交渉する
- 国民生活センターなどに相談する
- 解決しない場合は法的手段を検討する
それぞれ詳しく解説します。
賃貸借契約書とガイドラインを確認する
退去費用に納得いかないときは、まずは賃貸借契約書とガイドラインを確認しましょう。
賃貸借契約書には退去時の取り決めが記載されており、特約がついているケースもあります。 原則として契約の内容が優先されますが、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、特約の要件として以下のように定められています。
① 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
② 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
③ 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
※引用元:国土交通省|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
特約の要件を満たしていない内容は、たとえ契約書に記載があっても無効になる場合があります。
契約書に記載のないものは、ガイドラインで費用負担の区分を確認しましょう。 ガイドラインに法的拘束力はありませんが、入居者に不利な費用負担を要求される可能性を軽減できます。
賃貸借契約書とガイドラインを確認して、退去費用の請求内容が妥当であるか調べましょう。
管理会社(またはオーナー)に交渉する
退去費用で納得いかない内容を管理会社(またはオーナー)に伝え、交渉しましょう。
契約書に記載がなく、ガイドラインでオーナー負担の内容が入居者に請求されている場合は、その旨を伝えてみると良いでしょう。
費用負担の区分に問題がなくても、請求費用が高額なケースもあります。 その場合は、リフォーム会社に見積もりを依頼し、請求費用が妥当であるか調べるのもひとつの方法です。
国民生活センターなどに相談する
管理会社との交渉が上手くまとまらない場合は、国民生活センターなどの公的な相談窓口で相談しましょう。
退去費用で納得いかない内容を伝えることで、どのように行動すれば良いかアドバイスがもらえます。
無料で電話相談できるため、一人で抱え込まずに気軽に相談しましょう。
※参考元:独立行政法人国民生活センター
解決しない場合は法的手段を検討する
交渉しても解決しない場合は、以下のような法的手段を検討しましょう。
- 少額訴訟
- 裁判外紛争処理制度
- 通常訴訟
退去費用が60万円以下の場合は「少額訴訟」の手続きが便利です。
少額訴訟とは、60万円以下の支払いを請求する民事裁判において、費用や時間をかけずにスムーズに紛争を解決できる裁判制度です。
訴状を提出して1〜2か月後に原則として審理が1回開かれ、直ちに判決が出るため、手間が少なく済みます。
話し合いで解決するのが最善ですが、解決しない場合の最終手段として覚えておきましょう。
※参照元:裁判所|少額訴訟
退去費用のトラブルを防ぐ方法
退去費用でトラブルにならないためには、以下の方法でトラブルを未然に防ぎましょう。
- 入居前に写真を撮っておく
- 退去前に掃除する
- 退去費用の請求を放置しない
それぞれ順番に解説します。
入居前に写真を撮っておく
退去費用のトラブルを未然に防ぐには、入居前に部屋のキズや汚れを写真などで記録しておくことが重要です。
築年数が古い物件は、入居の時点でキズが多数ついているケースがあります。入居前の物件の状態を写真で残しておくことで、自分がつけたキズではないことを証明できます。
退去前に掃除する
退去前にはできる限り掃除をしておきましょう。汚れた状態で退去費用を見積もられると、高額になりやすいためです。
特に水回りは汚れやすいため、日頃からこまめに掃除しておくことが重要です。
退去費用の請求を放置しない
退去費用に納得いかない場合でも、請求を放置してはいけません。
納得いかないからといって放置すると、連帯保証人に迷惑がかかったり、オーナーから訴訟を起こされたりする可能性があります。
請求を放置しても問題は解決しないため、納得できない旨を管理会社に伝えて、双方が納得いく解決策を探しましょう。
まとめ
退去費用で入居者が負担する内容や、納得いかないときの対処法、トラブルを防ぐ方法を解説しました。
退去費用のうち、入居者の故意や過失によるものは入居者が負担する必要があります。退去費用に納得いかないときは、賃貸借契約書とガイドラインを確認し、管理会社に交渉しましょう。
交渉が上手くまとまらない場合は、公的な相談窓口に相談することでアドバイスがもらえます。それでも解決しない場合は、少額訴訟などの法的手段も検討しましょう。
退去費用でトラブルを防ぐには、入居前に写真を撮っておき、退去時はできる限り掃除をすることが重要です。
退去費用に納得できないからといって放置すると、さらなるトラブルを招くため、この記事で紹介した対処法などを参考にして、冷静に対応しましょう。
iimon 編集部