賃貸物件を借りる際には、敷金を支払うことが一般的ですが、敷金なしの賃貸物件も増えてきています。
初期費用を抑えられる反面、退去費用について不安を感じる人もいるのではないでしょうか?
この記事では、敷金なしの賃貸物件の仕組みや退去費用の目安について詳しく解説します。
事前に費用について知っておくことで、退去時に慌てずに準備ができるようになります。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
敷金の基礎知識
敷金とは、賃貸物件を借りる際にオーナーに担保として預ける保証金のことです。
オーナーは入居者から敷金をもらうことで、家賃の滞納や入居者が賃貸物件に損害を与えた際に備えられます。
入居者に問題がなければ、退去時に入居者負担の原状回復費用を敷金から差し引かれ、残った金額が返金されます。
敷金の相場
国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」によると、敷金の有無を三大都市圏のエリアごとに調査したところ、以下のような結果となりました。
エリア | 敷金ありの割合 | 敷金なしの割合 |
首都圏 | 59.8% | 33.1% |
中京圏 | 38.0% | 47.8% |
近畿圏 | 40.9% | 42.3% |
三大都市圏 平均 | 51.5% | 37.8% |
首都圏では敷金ありの割合が約6割と多く、中京圏や近畿圏では敷金なしの割合が多いことがわかります。
なお、同調査で「敷金あり」と回答した世帯に、家賃の何か月分支払ったのかを調査したところ、三大都市圏の平均は以下のようになりました。
支払った家賃の月数 | 敷金 |
1か月未満 | 8.1% |
1か月分 | 63.4% |
1か月超〜2か月未満 | 4.7% |
2か月分 | 19.8% |
2か月超3か月未満 | 1.0% |
3か月分 | 3.0% |
敷金として家賃1か月分支払った世帯が最多であり、次に家賃2か月分支払った世帯が多いことがわかります。
この調査からも、敷金の相場は家賃1〜2か月分であるといえます。
敷金なしの賃貸物件が存在する理由
敷金なしの賃貸物件が存在する理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- 家賃保証会社の利用を条件にしているため
- 退去費用を入居時にもらっているため
- 空室を早く埋めたいため
家賃保証会社(賃貸保証会社)とは、入居者が家賃を滞納した際に立て替えて、オーナーに家賃を支払う会社のことです。
家賃保証会社を利用していると、オーナーは入居者の家賃滞納リスクに備えられるため、敷金なしにしているケースがあります。
また、入居時にあらかじめ退去費用を支払ってもらうことで、敷金なしにしているケースもあります。
他にも、オーナーが空室を早く埋めたいと考えている場合、敷金や礼金をなしにすれば入居者の初期費用を抑えることが可能です。
そのため、集客目的で敷金なしにしているケースもあります。
退去費用とは?
賃貸物件を退去する際は、退去費用を支払う必要があります。
退去費用は、主に以下の2つに分類されます。
- 原状回復費用
- ハウスクリーニング費用
それぞれ詳しく見ていきましょう。
原状回復費用
原状回復費用とは、賃貸物件を入居者が住む前の状態に戻すのにかかる費用のことです。
具体的には、以下のような修繕にかかる費用を指します。
- 壁紙の張り替え
- フローリングの補修
- 設備の修理や交換
ただし、すべての修繕費用を入居者が負担する必要はありません。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、原状回復を以下のように定義しています。
「原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」
※引用元:国土交通省|原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
つまり、通常の使用による損耗や経年劣化については、原則としてオーナーが負担すべきとされています。
たとえば、壁紙の日焼けや家具の設置跡などは、通常の使用によるものとみなされ、ガイドラインではオーナーが修繕費用を負担すべきとしています。
一方、入居者の不注意で壁に穴を開けたり、ペットがキズをつけたりした場合、修繕費用は入居者の負担です。
なお、東京都の「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」では、原状回復の負担区分の考え方を以下のように示しています。
このガイドラインには法的強制力はないものの、入居者とオーナーの一般的な負担区分が示されているため、押さえておきましょう。
ハウスクリーニング費用
ハウスクリーニング費用とは、専門業者が賃貸物件をきれいにクリーニングするのにかかる費用のことです。
特殊な道具や薬剤を使用して、プロの専門業者が室内設備を徹底的に清掃します。
ハウスクリーニング費用は、原則としてオーナー負担ですが、賃貸借契約書に「入居者が負担する」という特約があれば、入居者負担になります。
【間取り別】退去費用の目安
賃貸物件の退去費用は、部屋の面積や間取りで変動します。
退去費用の目安を間取り別にまとめると、以下のようになります。
間取り | 退去費用(目安) |
1R(ワンルーム)・1K | 1.5〜4万円 |
1DK・1LDK | 2〜5万円 |
2DK・2LDK | 3〜8万円 |
3DK・3LDK | 5〜10万円 |
4DK・4LDK | 9万円〜 |
敷金があれば退去費用が差し引かれますが、敷金なしの賃貸物件では退去費用を支払う必要があります。
部屋でたばこを吸ったりペットを飼ったりしていると、退去費用が高くなりやすいため、日頃からこまめに掃除をしてきれいな状態を保ちましょう。
【居住年数別】退去費用の目安
居住年数別の退去費用の目安は、以下のとおりです。
居住年数 | 退去費用(目安) |
3年未満 | 約5万円 |
4〜6年 | 約6万円 |
7年以上 | 約9万円 |
一般的に10年以上住むことで、経年劣化による自然消耗が認められ、退去費用が安くなるとされています。
賃貸物件の経年劣化について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
関連記事:【図解あり】賃貸物件の経年劣化とは?原状回復の負担割合や退去費用の目安を解説
敷金なしの賃貸物件にかかる退去費用を抑えるポイント
敷金なしの賃貸物件にかかる退去費用を抑えるには、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 退去前に掃除しておく
- 賃貸借契約書と退去費用の見積もり内容を確認する
- 入居時に部屋の写真を撮っておく
それぞれ詳しく解説します。
退去前に掃除しておく
退去する前に、自分でできる範囲の掃除をしておくことがおすすめです。
基本的には退去後にハウスクリーニングを行うため、細かくきれいにする必要はありませんが、部屋が汚れている状態で退去時の立ち会いをすると、修繕費用が高くなりやすいです。
そのため、水回り設備や床、壁の汚れはなるべく取り除いておきましょう。
また、日頃から定期的に掃除をすることで、汚れが落ちやすくなり、退去時の掃除の手間を減らせるでしょう。
賃貸借契約書と退去費用の見積もり内容を確認する
退去費用の見積もりが提示されたら、賃貸借契約書の内容と照らし合わせて確認しましょう。
前述の国土交通省や東京都のガイドラインを参考にすることで、自分が負担すべき費用を理解しやすくなります。
ハウスクリーニングや経年劣化による修繕など、賃貸借契約書に記載のない内容が退去費用で請求されている場合は、管理会社やオーナーに確認しましょう。
入居時に部屋の写真を撮っておく
新築以外の賃貸物件では、入居時にすでにキズや汚れがついているケースがあります。
元々ついていたキズや汚れの修繕費用まで請求されないように、入居時に部屋の写真を撮っておくことがおすすめです。
入居時に写真を撮っておくことで、退去時のトラブル防止にも役立ちます。
まとめ
賃貸借契約時にオーナーに預ける敷金は、家賃1〜2か月分が相場ですが、敷金なしの賃貸物件を選べば、初期費用を抑えられます。
ただし、敷金なしの場合は退去費用が必要になるケースが多く、2DK・2LDKの間取りでは3〜8万円程度かかります。
敷金なしの賃貸物件にかかる退去費用を抑えるには、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 退去前に掃除しておく
- 賃貸借契約書と退去費用の見積もり内容を確認する
- 入居時に部屋の写真を撮っておく
敷金なしの賃貸物件を選ぶ際は、退去費用も含めた総合的な判断をすることが大切です。
高額な退去費用を請求されないように、日頃からきれいな状態を保つように心がけましょう。
iimon 編集部