近年、都市部を中心に増えているタワーマンション。
眺望の良さや充実した共用施設などに魅力を感じる人も多いでしょう。
しかし、地震大国の日本では、タワーマンションにおける地震のリスクも知っておく必要があります。
この記事では、タワーマンションの建物構造や地震時のリスク、対策などについて詳しく解説します。
目次
タワーマンションとは?
タワーマンションとは、一般的には20階建て以上の高層マンションを指します。
地震大国の日本では、1981年に耐震基準が改正されており、震度6〜7の地震が発生しても建築物が倒壊・崩壊しないことを基準にしています。
さらに、高さが60mを超える建築物は、建築基準法第二十条により、厳しい構造強度の基準を満たさなければなりません。
高さ60mのマンションは、20階相当にあたることもあり、タワーマンションは厳しい安全基準をクリアしていることになります。
つまり、タワーマンションであっても、地震による倒壊のリスクは低いといえます。
※参考:e-GOV 法令検索|建築基準法
タワーマンションの建物構造
タワーマンションは、地震の発生で建物が倒壊しないように、以下のいずれかの構造で建設されています。
- 耐震構造
- 制震構造
- 免震構造
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
耐震構造
耐震構造は、建物の強度を高めることで地震の揺れに耐える構造です。
柱や梁を太くし、壁を厚くすることで建物全体の強度を高めています。
耐震構造の主な特徴は以下のとおりです。
- 建物の強度が高い
- 比較的安価で建設できる
- 建物の揺れが大きく伝わる
耐震構造は、建物の強度が高い反面、建物全体で揺れを受け止めるため、壁や柱にヒビが入る可能性があります。
建物へのダメージが大きい傾向があるため、50階建てのような高層マンションにはあまり採用されません。
制震構造
制震構造は、建物内部にダンパー(制震装置)を設置し、地震の揺れを吸収する構造です。
ダンパーが地震の揺れを吸収するため、耐震構造よりも壁や柱へのダメージを軽減できます。
耐震構造よりも建設コストが高くなるものの、コストパフォーマンスに優れているため、タワーマンションでよく採用されています。
免震構造
免震構造は、建物と地盤の間にゴム層を入れて、地震の揺れが建物に伝わりにくくする構造です。
地震時の揺れを最も抑えられるため、建物内の家具や家電などの転倒を防ぎやすいでしょう。
免震構造は最も地震に強い構造ですが、建設コストが高いため、家賃や管理費などの費用も高い傾向があります。
地震に強いタワーマンションに住みたい人は、建物が免震構造であるかを確認しましょう。
タワーマンションで地震が発生した際のリスク
地震でタワーマンションが倒壊する可能性は低いものの、以下のようなリスクは想定しておく必要があります。
- 地震の揺れが長く続く
- エレベーターが止まる
- ライフラインが遮断される
それぞれのリスクについて詳しく見ていきましょう。
地震の揺れが長く続く
タワーマンションの高層階では、地震の揺れが長く続く傾向があります。
建物の構造や階数などによって地震の揺れ方は異なるものの、基本的に低層階は揺れが小さく、高層階は大きく伝わります。
地震の揺れが1往復する時間が長い大きな地震では、地震が収まった後でもしばらく揺れ続ける可能性もあるでしょう。
長時間の揺れは、入居者に強い不安や恐怖心を抱かせるおそれがあります。
エレベーターが止まる
地震が発生すると、タワーマンションのエレベーターの安全装置が作動して停止する場合があります。
エレベーターに乗っている人の安全を確保するための機能ですが、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
- エレベーター内に閉じ込められる
- 高層階からの避難が困難になる
- 救助や物資の運搬に支障をきたす
高層階に住む入居者は、階段を使って避難するにしても体力的な負担が大きく、特に高齢者や体の不自由な人にとっては困難な状況となります。
エレベーターの復旧に時間がかかると、日常生活にも大きな影響があります。
そのため、タワーマンションの高層階を検討している人は、リスクとして覚えておきましょう。
ライフラインが遮断される
エレベーター以外にも、水・電気・ガスなどのライフラインが遮断されることも考えられます。
ライフラインが遮断されると、スマホや冷蔵庫、トイレなどが使えなくなります。
ライフラインの復旧には、時間がかかる場合もあるため、モバイルバッテリーや食料、携帯用トイレなどを常備しておくことが重要です。
タワーマンションでできる地震対策
タワーマンションでできる地震対策としては、以下のようなものがあります。
- 非常用の持ち出し袋を用意しておく
- 倒れる危険のある家具や家電を固定する
- 避難経路や避難場所を確認しておく
- 低層階に住む
それぞれの対策について詳しく見ていきましょう。
非常用の持ち出し袋を用意しておく
非常用の持ち出し袋とは、災害時に最低限必要なものをまとめたバッグのことです。
タワーマンションでは、エレベーターやライフラインが使えなくなることを想定して、以下のようなものを用意しておくと良いでしょう。
- 飲料水(1人1日3リットルを目安に3日分)
- 非常食(缶詰やレトルト食品など3日分の食料)
- 携帯用トイレ
- 懐中電灯
- モバイルバッテリー
- 救急セット
- 現金や貴重品
- 着替えや防寒具
タワーマンションの高層階は、避難に時間がかかる可能性があるため、通常よりも多めに備蓄しておくことをおすすめします。
また、断水に備えて浴槽に水をためておくのも効果的です。
なお、非常用の持ち出し袋の中身は定期的にチェックを行い、飲料水や食料などの消費期限が切れていないかを確認しましょう。
倒れる危険のある家具や家電を固定する
地震の揺れによる家具や家電の転倒は、大きなけがの原因となります。
特にタワーマンションの場合、揺れが長く続く可能性があるため、以下のような対策を講じておきましょう。
- 背の高い家具や家電は壁に固定する
- 寝室に背の高い家具を置かない
- ガラスに飛散防止フィルムを貼る
家具や家電を固定するには、L字金具やつっぱり棒などを使用します。
地震で家具や家電が倒れないように、早めに対策しておきましょう。
避難経路や避難場所を確認しておく
タワーマンションの避難経路や避難場所を確認しておくことで、地震や火災などの災害が発生しても、スムーズに避難しやすくなります。
具体的には、以下のような内容を把握しておきましょう。
- 階段の位置を確認する
- 複数の避難経路を把握する
- 非常用階段の使用方法を確認する
- 近くの避難場所や広域避難場所を確認する
- 家族との連絡方法や集合場所を決めておく
また、タワーマンションの管理組合や自治会が実施する防災訓練に参加するのも良いでしょう。
実際に避難経路を歩いてみることで、所要時間や注意点も把握できます。
低層階に住む
タワーマンションで地震のリスクを軽減するには、低層階に住むのもひとつの方法です。
低層階は高層階よりも揺れが少なく、エレベーターが止まっても階段で避難しやすいのが特徴です。
また、低層階は高層階よりも家賃が安い傾向があるため、内見して比較検討すると良いでしょう。
自分に合う階層を選ぶポイントについて知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。 関連記事:タワーマンションは何階がベスト?各階層のメリットや選ぶポイントを解説
まとめ
高層建築物であるタワーマンションは、制震構造や免震構造などによって、地震が発生しても倒壊しない設計になっています。
しかし、高層階では長期間揺れ続けたり、エレベーターが止まったりなどのリスクは存在します。
地震対策としては、非常用の持ち出し袋を常備しておき、家具や家電が倒れないようにしておくなどが効果的です。
避難経路や避難場所を家族で共有し、不安な人は低層階を選ぶのも良いでしょう。
タワーマンションにおける地震のリスクを理解し、日頃から十分な備えをしておきましょう。
iimon 編集部